Jonesと言われた男

家庭菜園を主に呟きますが、時には脱線するかも……

映画『とら男』からの~メッセージ⁉

~現役捜査員の目に触れることを期待しながら『とら男』からのメッセージ~

 

 映画『とら男』は、「生まれるべきして生まれた映画……」との思いを、前々回のブログで書いたが、今日はもう少し踏み込んで、映画では伝えられなかったことについての『とら男』の想いについて書いてみたいと思います。

 

 どの都道府県警にも何件かは残っている「長期未解決事件……」~我が県にも10年以上経過した長期未解決事件が2件残されている。

 

 映画『とら男』には、長期未解決事件を風化させてはいけない……!~などとの願いが込められている。

『とら男』を観た方からの共感の声も(それも現役から)届いているのであるが、改めて『とら男』の犯罪捜査についての考え方~特に長期未解決事件捜査について、備忘録として綴ってある文書を紹介したいと思います。

 

第1 未解決事件に対する刑事警察の問題点

 事件は、どれ一つとして同じものはなく、捜査本部の内情を知らない為、具体的なことについてまで言及出来ないが、実際に事件は解決されておらず、我が輩の経験から一般的な問題点などを考えてみることにした。

 

1 捜査指揮に一番の問題があるのでは?

・捜査本部事件は、捜査指揮の善し悪しが事件解決を左右すると言っても過言でなく、実際に解決されていないと言うことは、捜査指揮そのものに問題があると思える。

 

・犯罪捜査は「推理・検証の繰り返し」で犯人にたどりつくもの。

 捜査指揮を執る捜査幹部に「的確な推理が出来ていないか……?」(推理には正確な情報が前提)~「検証が間違っているか……?」(確実な詰め)どちらかが欠けていると思われる。

 例えて言うと「1+1はと聞かれ、バカか2に決まっている」としか言えない幹部が捜査指揮を執っている。

「1+1は2の他に3か4もありうる」(小数点が四捨五入されているかも知れない)ことに気付かない捜査幹部……???

 言い換えれば「捜査報告書の行間が読めない捜査幹部……???」とも言える。

 

「推理・検証」と一口に言うけれど、簡単なことではない。

・推理に必要なのは、

「知識・経験は勿論、柔軟な思考回路をもっているかどうか……」

・検証に必要なことは、

「真実を見極める眼をもっているかどうか……」     

 これらは、一朝一夕にできるものではなく、その人の生き方にもよる。

 要は、その人間がどのような生き方をしてきたか……

 

2 捜査員の気概(刑事根性)にも問題があるのでは?

・捜査本部の捜査指揮が間違っていても、時として、ヒーローとなる捜査員が事件解決に導く場合がある。

 

(我が輩もそのような立場に立ったことがある……)

 小僧寿し女店長殺人事件(昭和59年)で、捜査本部の幹部から「お前、そんなことをやっていて、犯人が捕まると思っているのか……⁉」と罵倒され「絶対犯人を検挙してやる……」との思いで捜査を続けた結果、3カ月後に犯人検挙に至った。

・今の刑事に、そのような捜査員がいるかは疑問……⁇~組織捜査を強調するばかりに全国的に育っていないのかも知れない……。

 

第2 どうすればいいか? (今後の捜査に期待すること……)

 犯人を捜すための捜査は「推理・検証」の作業を繰り返すことによって、犯人にたどり着くもの。 

 事件には、どれ一つと言って同じ事件はなく千差万別であるが、どのような事件であっても「犯人の意思・思いが強く表れている客観的な状態」が必ずある。

 主観を省いた客観的事実だけを基に推理を立て検証をし、出た結果を基にさらに推理検証を繰り返し、地道に絡まった糸をほぐすように解明して行くことによって、踏み固めてしまった容疑者を浮上させる。

 

〇久安の殺人事件について

 犯人の意思が確実に表れている点は何か……???

・被害者の携帯電話を持ち去っている……。

・犯人が被害者の居室まで出向いている……。

・凶器が現場台所のフライパン使用……など。

 

 これらから考えられることについて、

・携帯電話については、電話本体のみに記録された、登録電話番号、受信履歴、メール受信履歴などが知れるのを恐れた……。

・犯人が被害者方へ出向いている点については、日常の行動パターンの一つであり、被害者には警戒心がなく、犯人は、被害者に会って話をしなければならないことがあった~逆に、被害者が犯人に話をしなければならないことがあった……。

・犯人は凶器など準備しておらず、その場にあった物を使っている~その場の成り行きでの犯行……など。

 

 現場の状況などから考えられること(推理)を基に、全てについて捜査項目を立て、確実に潰していく(検証)必要がある。

 検証の結果出た事実について、更なる推理・検証を繰り返す。

 

・久安事件については、どのような捜査状況になっているかまで分からないが「面識犯」に間違いない事件であるにもかかわらず、今まで検挙出来ないのは、これまでの捜査でミスっているところがあると言える。

 犯人の名前は、これまでの捜査報告書のどこかに、何らかの名目で書かれているはず~容疑者として吟味をしていないか、不確実なアリバイをアリバイ有りとして書かれている可能性あり(当然、捜査幹部に、ミスをミスと認める度量が必要)

 

 私が、発生から10年後の女性コーチ殺人事件捜査で執った捜査手法は、捜査本部がどこでミスをしたのかを探す作業によってミスを発見した。

 作業をする者は、誰でもいいと言う訳でなく、報告書の行間が読める者でなければならない。

 

〇コンビニローソン桑原店の強殺事件について

 犯人の意思が表れている点は何か?

(公にされている項目だけでの判断で、他にも判断材料はあるはず……)

・防犯カメラを意識して、女性用カツラ、マスク、カッパのフード、(防犯カメラの映像では、帽子かヘルメットをかぶっているように見える)など、2重3重に顔を隠している……。

・女性用カツラを変装に使う発想……。

・盗難車を犯行場所までの足と逃走手段に~且つその車で、車を盗んだ付近まで戻っている……(この事件推理する上での最大のポイント)

 

 これらのことから考えられること

・犯人にとって面が割れることが命取り~(流しよりも地玉の可能性大……)

・犯行場所(車を盗んだ場所、犯行を犯したコンビニ)に強い土地鑑がある。

・犯行後、盗難車を盗んだ付近まで持って行っていることについては、単純に考えれば、その場所まで自分の車かバイクなどで行って乗り継ぎの足があったか、その付近に強い土地勘がある(犯人に、車を盗んだ場所まで戻る必要があった……)

・変装に女性用カツラを使ったとすれば、犯人の趣味、又は、カツラを入手出来る環境にいた。

・逃走途中に女性用カツラを捨てたのが間違いないとすれば、カツラを持って帰らなくても不思議に思う者がいないか?~カツラを持って帰れば、いらぬ疑いを持つ者がいる環境……。

 

〇事件解決のために後輩にお願いしたいこと

 DNAなど科学技術は、両刃の剣であることを認識すべき(鑑定物件の吟味……)

 容疑適格者が浮上していても、鑑定ミス・手続きミス・捜査ミスなどでふるい落としされていないかの見直し作業をする必要がある。

 時として、前任者からの引き継ぎが盲点になっている場合が在る。

  

・久安事件では、

 初期の捜査ミスを認めた上で、これまでの捜査結果全てを見直す。

 

・コンビニ強殺事件では、

 現実にあるもの見えるもので適格な推理を立て、捜査すべき地域・対象を選定して容疑者を浮上させる地道な捜査。

 一般人からの情報に頼る待ちの捜査でなく、捜査員自ら考えて情報をとる捜査を展開すべき。

 容疑者を浮上させることが出来れば、容疑者と犯行の結び付けは容易い。

 

第3 刑事警察に期待すること

 捜査幹部には、過去の捜査の失敗事例を検証して将来に生かして欲しい。

 捜査員には、時流に逆らってでも「本質を見抜く洞察力」「真実を見極める眼」を持てるよう研鑽して欲しい。

 

第4 一般の方には

 事件の情報は、

「犯人をしっている」とか「あの時こんな人を見た」などが、必要な情報と思っている人がほとんどだと思いますが「事件を境に人が変わった」「生活が変わった」なども重要な情報です。

 

金沢久安アパート殺人事件

 2008年(平成20年)6月27日(金)発生~被害者 会社員 橋本清勝(当22歳)

 発生から14年後の似顔絵発表……???

 

〇ローソン加賀桑原町店における強盗殺人事件

 2010年(平成22年)11月3日(水)午前3時ころ発生~被害者 店長 山崎外茂治(当68歳)

『とら男』思い出の事件

〇悔いが残った事件

・1992年9月30日(水)発生

 女性コーチ殺人事件

 被害者 安實千穂(当20歳)

 2007年9月30日~時効成立。   

 

〇忘れられない事件

(刑事としての考え方の基となった事件)

・1980年~内灘町お好み焼き女店長殺人事件

  捜査本部設置から49日目に検挙。

・1984年~小僧寿し女店長殺人事件

  捜査本部設置から3カ月後に検挙。

 

〇捜査指揮の問題で参考にして欲しい事件

・北陸農政局川島宿舎殺人事件

 (昭和53年4月発生~昭和54年4月検挙)

 

―以上『とら男』ノートより―